社会人として働いていると、恩師や友人の親御さんなど、お世話になった方の訃報に接しても、どうしても仕事の都合がつかずに葬儀に参列できないという場面に遭遇することがあります。私が以前、学生時代に大変お世話になった部活の顧問の先生が亡くなった際も、ちょうど会社の重要なプロジェクトの納期直前で、地方で行われる葬儀に駆けつけることは物理的に不可能でした。通夜にも告別式にも行けない自分を不甲斐なく思い、ただ電報を打つことしかできなかったのですが、葬儀が終わって一週間ほど経ち、仕事が一段落したタイミングで、先生のご自宅へ後日弔問に伺うことにしました。後日弔問とは、葬儀後しばらくしてから自宅を訪問し、線香をあげてお悔やみを伝える方法ですが、これには事前の連絡が不可欠です。私はまず、先生の奥様に電話をかけ、葬儀に行けなかったお詫びを伝えた上で、「もしご迷惑でなければ、お線香をあげに伺わせていただけないでしょうか」と伺いを立てました。葬儀直後の遺族は疲労が溜まっているため、あまり早い時期の訪問は避けた方が良いと言われますが、四十九日までの間であれば、まだ祭壇が飾られていることが多く、故人を偲ぶには良い時期だと判断しました。訪問当日は、派手すぎない平服(ダークスーツ)を着用し、手土産として日持ちのする和菓子と、葬儀の時に渡せなかった香典を持参しました。玄関先で挨拶をした後、祭壇の前に通され、遺影の先生と対面した時は、葬儀に行けなかった悔しさと感謝の気持ちが溢れ出し、涙が止まりませんでした。奥様は「わざわざ来てくれてありがとう。主人も喜んでいると思います」と優しく声をかけてくださり、その後、お茶をいただきながら先生の思い出話に花を咲かせることができました。葬儀という儀式の場では、多くの参列者がいて遺族とゆっくり話すことは難しいものですが、後日弔問という形をとったことで、かえって落ち着いた雰囲気の中で故人を偲び、遺族の方とも心を通わせることができたように感じます。葬儀に行けないことは残念ですが、それが全ての終わりではなく、別の形でお別れをする方法があることを身をもって知りました。