故人への深い弔意を示すため、供花を「一対」で贈ることは、非常に丁寧で心のこもったお悔やみの形です。しかし、その手配には、いくつか注意すべき点があります。良かれと思って行ったことが、かえってご遺族の負担になったり、場の雰囲気を損なったりすることのないよう、細やかな配慮を心がけましょう。まず、最も重要な注意点が「ご遺族の意向の確認」です。近年増えている家族葬などでは、ご遺族が「静かに故人を見送りたい」「参列者に余計な気遣いをさせたくない」という想いから、「ご供花は固くご辞退申し上げます」と、供花そのものを辞退されているケースが少なくありません。この意向を無視して、立派な一対の供花を一方的に送ってしまうのは、最大のタブーです。ご遺族の気持ちを最優先し、辞退の申し出があった場合は、潔く供花を贈るのを諦めるのがマナーです。次に、斎場の「スペースの問題」も考慮する必要があります。特に、小規模な家族葬向けの斎場や、ご自宅で葬儀を執り行う場合、祭壇周りのスペースには限りがあります。そこに、想定外の大きな一対の供花が届いてしまうと、飾る場所に困り、ご遺族や葬儀社を悩ませてしまう可能性があります。供花を贈る際には、葬儀を執り行っている葬儀社に直接連絡を取り、「〇〇と申しますが、供花を一対でお贈りしたいと考えております。斎場のスペースなどに、問題はございませんでしょうか」と、事前に確認するのが最も親切な対応です。また、「周囲とのバランス」も、忘れてはならない配慮です。例えば、故人の友人という立場で、ご遺族である「子供一同」からの一対の供花よりも、さらに豪華で大きな一対の供花を贈ってしまうと、どうでしょうか。その行為は、弔意の表現というよりも、自己顕示と受け取られかねず、ご遺族に不快な思いをさせてしまうかもしれません。故人との関係性をわきまえ、あまりにも華美になりすぎないよう、葬儀社と相談しながら、全体の調和を考えた供花を選ぶことが大切です。供花は、贈る側の自己満足であってはなりません。常に、故人への敬意と、ご遺族の心に寄り添う気持ち。その二つを天秤にかけながら、最も適切な形を選択する、という謙虚な姿勢が求められるのです。
供花を一対で贈る際の注意点