世界から見た日本の火葬文化の特異性
日本では99.9%以上という極めて高い火葬率を誇りますが、この状況は世界的に見ると非常に特異なものです。キリスト教圏やイスラム圏をはじめ、世界の多くの国や地域では、現在も土葬が埋葬の主流となっています。例えば、欧米の映画などで、墓地に棺を降ろすシーンが描かれるのは、彼らの文化において土葬が一般的だからです。キリスト教では、将来的な「最後の審判」の際に肉体が復活するという思想が、イスラム教では、神から授かった身体を焼くことは許されないという教えが、土葬文化の根底にあります。では、なぜ日本はこれほどまでに火葬が普及したのでしょうか。その理由としては、国土が狭く墓地用地が限られているという物理的な制約や、伝染病予防という公衆衛生上の要請が大きかったことが挙げられます。しかし、それだけではありません。そこには、日本人独特の死生観や宗教観が深く関わっています。仏教の中でも特に浄土真宗などでは、火葬が推奨されてきた歴史があります。また、日本人は「お骨」に対して特別な想いを抱く文化を持っています。火葬後、近親者が集まってお骨を拾い、骨壺に納める「お骨拾い」の儀式は、故人との最後の別れと、死を現実として受け入れるための重要なプロセスとなっています。このような儀式は、土葬が主流の文化圏の人々にとっては非常に珍しく、時に奇異に映ることさえあります。遺体を焼いて骨にするという行為自体に抵抗を感じる文化も少なくありません。世界では土葬がスタンダードであるという事実を知ることは、私たちが当たり前だと思っている火葬という文化が、実は世界の中ではユニークな存在であることを教えてくれます。それは、日本の風土や歴史、精神性が生み出した、独自の弔いの形なのです。