仏式の葬儀を執り行う場合、葬儀の日程を確定させるための、最後の、そして非常に重要なパズルのピースが「宗教者(僧侶など)」のスケジュールの確保です。火葬場と斎場の予約が取れたとしても、儀式を司る僧侶の都合がつかなければ、葬儀を執り行うことはできません。この宗教者との日程調整は、敬意と配慮を持って、慎重に進める必要があります。まず、故人が生前お付き合いしていた「菩提寺」がある場合は、ご逝去後、できるだけ早い段階で、葬儀社よりも先に、直接ご遺族から連絡を入れるのが最も丁寧なマナーです。電話で「〇〇の家内(長男)の〇〇です。実は昨夜、父の〇〇が亡くなりました。つきましては、お葬式のお願いをしたいのですが」といったように、まずは一報を入れます。その上で、葬儀社と相談して決めた、火葬場や斎場の空き状況に基づいた日程の候補をいくつか提示し、ご住職の都合の良い日時を伺います。この時、ご住職のスケジュールを無視して、一方的に「この日でお願いします」と決定事項のように伝えるのは、大変失礼にあたります。必ず、「ご住職様のご都合はいかがでしょうか」と、お伺いを立てる姿勢が大切です。特に、お盆やお彼岸の時期、あるいは土日などは、ご住職は法事などで多忙を極めています。希望の日時が合わないことも十分に考えられます。その場合は、再度、火葬場や斎場の空き状況と照らし合わせながら、日程を再調整する必要が出てきます。では、特定の菩提寺がない場合はどうすれば良いのでしょうか。その場合は、葬儀社に相談するのが最も一般的な方法です。多くの葬儀社は、様々な宗派の寺院と提携しており、故人の宗派に合わせた僧侶を紹介してくれます。葬儀社が間に入って、日程の調整から、お布施に関するアドバイスまで、すべてを円滑に進めてくれるため、ご遺族の負担は大きく軽減されます。このように、葬儀の予約は、火葬場、斎場、そして宗教者という、三者のスケジュールが奇跡的に合致して、初めて成立するものです。その中でも、宗教者への連絡と調整は、故人が篤く信仰していたのであればあるほど、敬意を払い、丁寧に進めなければならない、非常にデリケートなプロセスなのです。