香典を不祝儀袋に包む際、多くの人が迷うのが「お札の向き」や「入れ方」ではないでしょうか。普段あまり意識することのない細かな作法ですが、これには故人への敬意と、悲しみの気持ちを表すための、大切な意味が込められています。この機会に、正しいお札の入れ方をマスターし、自信を持って香典を準備できるようになりましょう。まず、香典に入れるお札は、複数枚ある場合は、すべてのお札の向きをきちんと揃えるのが基本です。ばらばらの向きで入れるのは、相手に対して非常に失礼にあたります。そして、その向きには明確なルールが存在します。それは、「お札の肖像画が描かれている面を、中袋の裏側(封をする側)に向ける」そして、「肖像画が、袋の下側に来るように入れる」という二つの原則です。つまり、中袋を開けた時に、お札の裏側(肖- 像画がない面)が見え、かつ、肖像画の顔が下を向いている状態が、正しい入れ方となります。この作法には、「悲しみにくれて、顔を伏せている」「顔を上げられないほどの深い悲しみ」といった、弔意の気持ちを表現する意味合いが込められていると言われています。結婚式のご祝儀など、慶事の場合はこれとは全く逆で、お祝いの気持ちを表すために肖像画が表側の上に来るように入れます。弔事と慶事で、お札の向きが正反対になるということを、セットで覚えておくと良いでしょう。また、お札を選ぶ際には、「新札を避ける」という、もう一つの重要なマナーがあります。新札は、銀行などで前もって準備しておかなければ手に入らないため、「不幸を予期して、あらかじめ準備していた」という印象を与えてしまい、ご遺族に対して失礼にあたると考えられているからです。もし、手元に新札しかない場合は、一度、真ん中で軽く折り目を付けてから入れるようにしましょう。この一手間が、「急な知らせで、慌てて駆けつけました」という気持ちを表すための、奥ゆかしい配慮となります。もちろん、あまりにも使い古されて、しわくちゃだったり、破れていたりするお札を入れるのは論外です。適度な使用感のある、きれいなお札を選ぶように心がけましょう。これらの細やかな心遣いが、あなたの深い悲しみと敬意を、静かに、しかし雄弁に伝えてくれるのです。
不祝儀袋の正しいお札の入れ方