葬儀の際に贈るお悔やみの花「供花」。その手配をする際、葬儀社や生花店から「一対(いっつい)にされますか、それとも一基(いっき)にされますか」と尋ねられ、戸惑った経験を持つ方もいるかもしれません。この「一対」という言葉は、葬儀の慣習において特別な意味を持つ単位です。これを正しく理解しておくことは、ご遺族に失礼のないよう、適切に弔意を示すための第一歩となります。まず、「一基」とは、供花を数える際の基本的な単位で、アレンジメントや花籠を一つ、という意味です。祭壇の片側に一つだけ供花を飾る場合、それは「一基」となります。これに対し、「一対」とは、同じデザインの供花を二基で一組として贈ることを指します。つまり、「一対=二基」ということになります。祭壇に向かって、左右対称になるように、同じ花籠が二つ飾られている光景を思い浮かべていただくと、分かりやすいでしょう。なぜ、二つで一組の「一対」という単位が存在するのでしょうか。これには、仏教における考え方や、日本の古来からの思想が深く関わっています。仏教では、仏様の世界はシンメトリー(左右対称)であると考えられており、寺院の伽藍配置や仏像の飾り方など、あらゆる場面で対の構造が重んじられてきました。祭壇に花を飾る際にも、この左右対称の美しさを保つために、一対で供えるのが最も丁寧で正式な形とされてきたのです。また、一対で供えることは、故人様へのより深い敬意や、より手厚い弔意を示すことにも繋がります。そのため、故人と非常に近しい関係にあった親族(子供一同や兄弟一同など)や、法人として特に重要な取引先などが、一対で供花を贈ることが多く見られます。当然ながら、一対で贈る場合は、費用も一基の倍になります。葬儀社から「一対にしますか」と尋ねられた際には、この意味を理解した上で、故人との関係性や、ご自身の予算を考慮して、一基にするか一対にするかを判断することが大切です。