大切な方が亡くなられた際、ご遺体を安置する場所としてまず思い浮かぶのが霊安室ですが、その霊安室には病院にあるものと葬儀社が運営するものがあり、両者には明確な違いがあります。それぞれの特徴を理解しておくことは、故人とのお別れの時間をどのように過ごすかを決める上で非常に重要です。まず、病院の霊安室は、あくまで「ごく一時的」な安置場所として設けられています。病院で亡くなられた場合、次の安置場所が決まるまでの数時間から半日程度、ご遺体を預かってもらうための施設です。そのため、設備は比較的簡素なものが多く、個室ではなく複数のご遺体をカーテンで仕切って安置するタイプも少なくありません。面会にも時間の制限が設けられていることがほとんどで、夜間の付き添いなどは基本的にできません。あくまで次のステップに進むための「待機場所」と捉えるのが適切です。一方、葬儀社が運営する霊安室や安置施設は、通夜や葬儀までの数日間、ご遺体を適切に安置することを目的とした専門施設です。こちらは、遺族が安心して故人と過ごせるよう、様々な配慮がなされています。例えば、プライバシーが守られた完全個室タイプであったり、遺族が宿泊して付き添いができる「添い寝」が可能な施設であったり、まるでホテルのような内装で落ち着いた時間を過ごせるよう工夫されていたりします。もちろん、ご遺体の状態を最適に保つための冷却設備も万全です。費用面では、病院の霊安室の方が安価な傾向にありますが、利用時間が短いため、結局は速やかに葬儀社の安置施設か自宅へ移動させる必要があります。どちらを選ぶかは、費用だけでなく、葬儀までの間、故人とどのように寄り添いたいか、という遺族の気持ちによって決めるべきでしょう。