葬儀や通夜に参列する際、故人への弔意とご遺族へのいたわりを示すために持参する「香典」。この香典を準備するにあたり、現金を不祝儀袋に包む一連の作法は、社会人として必ず身につけておきたい、非常に重要なマナーです。単にお金を入れれば良いというものではなく、その包み方の一つ一つに、日本の文化に根ざした深い意味と、相手への細やかな心遣いが込められています。ここでは、その基本中の基本となる、香典の包み方の流れを解説します。まず、用意するものは「不祝儀袋」「中袋(または中包み)」「薄墨の筆ペン」、そして香典に入れる「現金」です。現金は、新札を避けるのがマナーとされています。「不幸を予期して、あらかじめ準備していた」という印象を与えないためです。もし手元に新札しかない場合は、一度軽く折り目をつけてから使うようにしましょう。次に、不祝儀袋を選びます。水引の色は黒白か双銀、結び方は「二度と繰り返さないように」との願いを込めた「結び切り」のものを選びます。包む金額に応じて、袋の格(印刷タイプか、本物の水引か)を使い分けることも大切です。そして、中袋にお金を入れます。お札の向きには決まりがあり、肖像画が描かれている面を、中袋の裏側(封をする側)に向け、さらに肖像画が下になるように揃えて入れます。これは、悲しみに顔を伏せている様子を表すためです。中袋の表面には、包んだ金額を「金 壱萬圓也」のように大字で書き、裏面には自分の住所と氏名を正確に記入します。この情報が、ご遺族が香典返しを手配する際の重要な手がかりとなります。最後に、お金を入れた中袋を、外側の不祝儀袋(上包み)で包みます。上包みの裏側の折り返しは、「悲しみが下に流れるように」という意味を込めて、上側の折り返しが下側にかぶさるように折ります。結婚式などの慶事とは逆になるので、絶対に間違えないように注意が必要です。この一連の丁寧な手作業の中に、言葉にしなくても伝わる、深い弔いの心が宿るのです。
香典の包み方基本の「き」